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2004/03/15

人身事故の被害者になると、長期間の入通院を強いられたり、最悪の場合は後遺症が残り労働能力が低下したり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんだりすることもあります。

交通事故の加害者は民法709条(不法行為の一般的要件、効果)でいう「故意または過失によりて他人の権利を侵害したる者」にあたり「これによりて生じたる損害を賠償する責に任」じられています。

ところが、事故当初はお見舞いに来ても、保険会社が示談代行者として中に入ってくると、被害者側と加害者の接触はなくなることがほとんどのようです。

保険会社が十分な補償をしてくれれば、まだ慰められますが、被害者が納得できる補償を得ることができるケースは少ないのが現実です。
自分が交通事故の被害者になることを予想して、そのときに備えて事前に勉強をしている人はほとんどいないうえ、事故によるけがが治れば職場復帰に忙しく、補償に関することを公表してくれる人はほとんどいないので、どんなふうに賠償額が決まるかを知っている人はあまりいません。

しかも、示談をする相手が交通事故の専門家である保険会社の人であれば、いかに会社の出費である賠償額を減らすかという観点で知恵をめぐらしてきます。

「相手を知り己を知れば百戦あやうからず」という孫子の兵法は保険会社には当てはまっても、残念ながら被害者には当てはまりません。


そんな中でも、「交通事故の被害者が納得いく損害賠償を勝ちとる法」(日本実業出版社、吉岡翔(ペンネーム)著)の著者は、高校一年生の息子(A君)が自転車に乗っていて自動車にぶつかり、下腿部複雑骨折で入院5ヶ月、さらに後遺症(11級)が残ることになった事故で、書名のごとく納得いく賠償を得るにいたった過程を詳細に記述しています。

当初、加害者側の保険会社も警察も、A君の過失が大きいという加害者のウソを信じて、被害者側は治療費の支払いを受けるどころか、加害者の車の修理代を払うことになるかもしれないという状況にありました。

交通事故のことはほとんど知らなかった著者は、このときから猛勉強を始め、保険会社やその顧問弁護士、警察、検察等にどう対処していけばよいかを学びながら、実地で試行錯誤を繰り返していきました。

保険会社が提示するわずかな金額による早期示談の誘いに対しては、示談とは、被害者が治癒するか症状が固定して全体の損害賠償額が決まってから行うものであるという原則を貫き、示談決裂後は交通事故紛争処理センターに和解のあっせんを申し込みました。

その結果、加害者側より賠償ゼロを宣言されたところから、4年半の歳月をかけて、最終的に2000万円近い賠償金を獲得し、過失割合も被害者の過失が100%と見られていたところから20%となりました。

この歳月の中で、保険会社の担当者に対する苦情を損保協会に申し立て、担当警察官への苦情をも申し立て、さらには保険会社の顧問弁護士の懲戒請求まで行っています。

真実を明らかにして権利を獲得する闘いのようすが、加害者側の交渉テクニックも示しながら興味深く描かれています。

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