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2010/04/15

実施権

 特許権の効力として、特許権者は、業として特許発明を独占的に実施することができます(独占的実施権)。他人に実施を認めて(ライセンス)、実施料を取得することもできます。このライセンスには、次のように専用実施権の設定と通常実施権の許諾という二つの方式があります。なお、特許発明の実施とは、物の発明についていえば、その物の製造(生産)、販売(譲渡)、貸与、使用、輸出、輸入、販売の申出(カタログによる勧誘やパンフレットの配布等を含む)等です。

①専用実施権
 独占的な実施を認める権利で、設定登録をすることによって成立します(登録が効力要件)。物権的権利とされます。
②通常実施権
 特許権者と実施をする者との間の契約によって許諾される債権です。通常実施権の設定登録をしておくと、特許権が移転したり、後から専用実施権が設定されたりしても、特許権、専用実施権を取得した者に対し、通常実施権の効力を主張できます(登録は対抗要件)。また、通常実施権において、ある者に対してだけ、必要により地域、期間を限って、独占的に実施を許諾する場合の権利を独占的通常実施権といいます。

特許権とノウハウ

 ノウハウ(技術秘密)は「秘密の技術上の情報」として、不正競争防止法によって保護される営業秘密(広義のノウハウ)の一部となります。ノウハウの利用については、実定法の根拠が乏しいのですが、ともに技術内容を扱う性質上、特許との類推が有用なことが考えられます。
技術を開発した場合、これを特許出願して内容を公開して特許権を取得するか、あるいはノウハウとして秘密のままにして利用するかは判断を要する問題です。特許とすれば、排他的独占権が得られますが、他方、技術内容の開示により、これを基に競争企業によってさらに優秀な技術を開発され不利を招くおそれがあるからです。

 特許権は、制定法上の独占権として、特許庁に対する出願、審査、登録という手続きを経て権利化されます。したがって、権利を取得するまでに長期間(約2年6カ月)を要し、また、出願、登録された国においてしか効力を有しません。これに対し、ノウハウは、一定の秘密的事実状態を保護するに過ぎないので、そのような手続きを要せず、また秘密が保持されている間は世界各国において効力を有します。

研究委託契約と共同開発契約

 研究委託契約は、当事者の一方(委託者)が相手方(受託者)に対し新技術の研究を委託する契約であり、共同開発契約は、当事者双方が新技術の開発をし、さらに利用をしようとする契約です。最近では、研究開発をすべて自社内で行うことは技術的に困難であったり、投資効率的にも得策でないという判断がなされ、ある部分の研究を他社あるいは公的機関等に委託するという傾向が強くなってきています。これらの契約においては、特許権等の実施契約に比べ、①研究開発の分野の分担、②費用の分担、③権利の帰属、④研究・開発の成果の実施、⑤第三者への権利の譲渡・再実施許諾等、難しい事項を取り決める必要があります。

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