発明の成立過程と特許
発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です。
発明の成立過程のうち、技術的に最も重要なものは、着想の提案としての「原理を考えた着想」と着想の具体化としての「モデルの設定」です。飛行機の発明においては、前者は「推進力により空気抵抗によって物体に揚力を生じさせる」ことであり、後者は「物体に動力装置を設けてプロペラ等を回し翼の形状を工夫した機構」です。発明において、原理は必ずしも解明できていなくても、原理の代わりに、再現性のある現象を指摘することで足ります。
特許を取得しうる者は、最初に発明した者であるとする先発明主義と最初に出願した者であるとする先願主義の二つの方式があります。先願主義の方が客観的に分かりやすく権利関係が安定していて良いと言われ、現在では米国以外の世界のすべての国は先願主義を取っています。
コンピュータプログラムやビジネス方法・モデルは、自然法則を利用するものでないので発明とはならないのではないかということが問題となります。特許庁は平成14年の法改正により、特許法における「物」に「プログラム等」が含まれるとし、記録媒体に記録されないプログラム等の情報財が特許法における保護対象となりうることとなりました。また、平成11年12月にホームページ上で、「ある課題を解決するために、コンピュータのハードウエア資源を用いて処理を行うなどの要件を満たすものであれば、ビジネス関連発明であるか否かに関わらず、ソフトウエア関連発明として特許の対象になり得ます」としており、トヨタ自動車の「発注指示装置」(いわゆるカンバン方式)や三井住友銀行の「振込処理システム」などはビジネス方法特許となります。
特許の要件
①産業上の利用可能性(有用性)
産業上利用できるものでなければなりません。ここで注意すべきは、医療は産業でないので、人間の病気の治療・診断・予防方法の発明は特許になりません。医療器具、医薬品であれば特許になります。
②新規性
特許出願以前に一般に知られてしまっていてはならないということです。
③進歩性
新規性は一応認められても、容易に考えつくような発明であってはならないということです。容易かどうかは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、公知技術に基づいて容易に予測できたか否かによります。
その他の知的財産権の要件
実用新案権の要件は、特許権と同様に、産業上の利用可能性、新規性、進歩性(特許権とは程度の差あり)があることです。意匠権の要件としては、工業上の利用可能性があること(量産可能という意味)、新規性があること、創作の容易なものでないことが必要です。商標権の要件としては、自他商品・役務の識別性があること、先願の登録商標と非類似であることなどが必要です。
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