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2012/09/15

価格設定における影響要因

①企業・マーケティング目標
企業目標とそれに伴うマーケティング目標は、価格設定に重要な影響を及ぼします。すなわち、マーケティング目標を売上高や市場シェアを重視して設定するのか、利益率や利益額を重視して設定するのかによって、製品の価格設定は異なるものとなります。

②価格以外のマーケティング要素
マーケティング要素はそれぞれ独立の変数ではありません。したがって、ブランド戦略やチャネル戦略、プロモーション戦略いかんにより、価格設定の方針もそれぞれ異なることになります。

③コスト
製品価格の設定の際には、その製品の製造コストとマーケティングコストを考慮して価格を設定します。特にコスト志向的な価格設定を行う場合は、コストは価格設定の重要な目安となります。

④競争戦略
競争戦略を構築する際にコストリーダーシップ戦略(競争企業よりも同種製品を低いコストで生産・販売する戦略)を採用するのか、もしくは差別化戦略(自社の製品に、買い手にとって魅力的な独自性を打ち出すことによって、競争企業に対する優位性を価格以外の点で築く戦略)を採用するのかにより、製品価格の設定は異なってきます。

⑤競争地位別戦略
企業が現在、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーのいずれの地位に位置しているかにより、価格戦略は異なってきます。

⑥需要の価格弾力性
需要の価格弾力性とは、価格が一%変化した際に需要量が何%変化するかという指標です。この弾力性の程度により、価格設定の意思決定も異なったものになります。

⑦マクロ経済状況
景気変動などの経済状況も価格設定に大きな影響を与えます。不況期と好況期では価格設定の基準も変動します。

⑧法規制
独占禁止法では、再販売価格の拘束や不当対価、差別価格などの不公正な取引方法が規制されています。

新製品の価格設定政策

新製品の価格設定政策には、初期高価格政策と初期低価格政策があります。

①初期高価格政策(上澄吸収価格戦略)
新製品の導入時に高い価格を設定しておき、成長期に移行するとともに価格を徐々に低下させていく方法です。すなわち、新製品の発売当初は、高価格でもその製品を購入する革新的な消費者(市場における上澄み)に網をかけ、その後価格を下げて保守的な消費者を取り込んでいくという政策です。

②初期低価格政策(市場浸透価格戦略)
新製品の価格を低価格に設定して、その価格的な魅力により大量の顧客に製品購入を促し、圧倒的な市場シェアを獲得していく、という政策です。

価格設定の方法

①コスト志向的価格設定法
製造原価に一定のマージン(粗利益)を加算することにより、販売価格を設定する方法です。

②需要志向的価格設定法
消費者の需要動向に合わせて価格設定を変化させていく方法です。

③競争志向的価格設定法
競合他社やその業界のプライスリーダーの価格を念頭に置いて自社の価格設定を行う方法や、請負契約による受注を入札で決定する際に入札参加企業が採用する価格設定の方法です。

2012/08/15

 製品とは、特定のニーズや欲求(ニーズの表現のこと)を充足する興味・所有・使用・消費のために市場に提供されうるすべてのものを指します。それは、物理的財・サービス・人間・場所・組織・アイデアを含んでいます。製品開発担当者が考慮すべき製品についての構造は次の各層からなる三層モデルと言われます。①消費者が製品を購入しようとする際に求める便益(ベネフィット)や消費者の問題を解決するサービス(製品の核)②製品の核を具体化したもので、品質、スタイル、特徴、ブランド名、パッケージング等(製品の形態)③製品の形態に伴って提供される付随的なサービスで、保証、アフターサービス、配達と信用供与、取り付け等のこと。

製品ライフサイクル

 製品ライフサイクルとは、製品が市場に投入され、廃棄されるまでの生命周期と言えます。製品によって製品ライフサイクルの長さには差がありますが、一般的に導入期(新製品が開発され初めて市場に投入された時期)、成長期(製品が消費者に認知され市場に浸透してくる時期)、成熟期(製品がある程度市場に浸透し需要が一段落する時期)、衰退期(製品の魅力が薄れ需要が減少していく時期)の四つの段階があります。各時期におけるマーケティング目標としては、製造・認知・使用(導入期)、市場シェアの最大化(成長期)、市場シェアを維持しつつ利益を最大化(成熟期)、コスト削減しブランド名で売ること(衰退期)と言えるでしょう。製品寿命に関する政策としては、品質・特徴・スタイルなどの変更やモデルチェンジ等による製品の有用性、安全性、利便性の拡大による製品寿命の延命化が定石ですが、既存製品が衰退期を迎える前から製品のモデルチェンジを頻繁に行い、消費者に対して常に新製品を提供することで旧製品のライフサイクルを意図的に短縮させる方法(計画的陳腐化政策)が取られることもあります。

ブランド

 ブランドとは、メーカーや販売者を識別する名称であり、言葉や記号、シンボルやデザインを組み合わせたもので、商品やサービスの力を高め、付加価値をつける存在と説明されます。ブランド価値は、最近では企業の「のれん代」として金額換算されるケースも出てきました。知名度やブランド・ロイヤルティ(顧客がブランドに愛着を感じること)、知覚品質(顧客が価値だと認める品質で、商品の機能や効能に限らず、想起するイメージも含みます)、特許や商標などのブランドが持つ資産要素や価値が多いほど、ブランド資産(ブランド・エクイティ)が高くなります。

 ブランド戦略としては、すでに成功した既存のブランド名を用いる場合と新たなブランド名を用いる場合がありますが、前者では、特定の製品カテゴリーに風味、形、色、原材料、容器のサイズ等を変えた新商品を導入すること(ライン拡張)と、新製品や改良製品を新しいカテゴリーに投入すること(ブランド拡張)があります。

サービスマーケティング

 サービスマーケティングとは、無形財であるサービスを対象とするマーケティングのことです。原則的な考え方は、有形財のマーケティングの場合と同じですが、サービス(無形財)ならではの特性が存在することも事実であり、それを踏まえた対応が必要です。サービスの特性は①無形性(形がなく目で見たり触ったりできない)②品質の変動性(誰がそれを提供するのか、いつそれが提供されるのかによってその質が異なる可能性が大きい)③不可分性(生産と消費が同時に行われ在庫がない)④需要の変動性(季節、週、1日の時間帯によってかなり変動する)があります。

2012/07/15

 マーケティングは販売やプロモーションのことのみをさす概念ではなく、「売れる仕組みづくり」すなわち、消費者ニーズの認識、魅力的な商品開発、有効な価格設定、流通や店舗の構築、適切なプロモーションといった一連の領域を包括する概念です。

マーケティングの定義

 AMA(アメリカ・マーケティング協会)は、2004年にマーケティングを次のように定義しています。「マーケティングは、組織的な活動であり、顧客に対し価値を創造し、価値についてコミュニケーションを行い、価値を届けるための一連のプロセスであり、さらにまた組織及び組織のステークホルダーに恩恵をもたらす方法で、顧客関係を管理するための一連のプロセスである」。また、マーケティング研究の第一人者であるフィリップ・コトラーは、次のように定義しています。「マーケティングとは、個人や集団が、製品及び価値の創造と交換を通じて、そのニーズや欲求を満たす社会的・管理的プロセスである」。

マーケティングの基本理念

 マーケティングの基本理念は時代とともに変遷を遂げています。
 需要が供給を上回っていた時代では、経営者は生産に対して経営努力を集中することになり、生産性を高めていかに効率よく製品を生産するか、ということが中心的な課題でした(生産志向)。時が進み、標準化された製品を大量生産することが可能になった段階では、経営者は、大量生産された製品を大量に販売する市場を開拓することが求められ、同時に、販売促進活動が必要になりました(販売志向)。供給が需要を上回り、企業間の競争が激化した成熟市場においては、企業の技術を生かした製品を生産し市場でその是非を問うという「プロダクトアウト」という販売志向の考え方とは異なり、市場ニーズを探り、それに合致した製品を開発して市場に提供するという「マーケットイン」という考え方が必要となりました(顧客志向)。さらに、企業のマーケティング活動は、その企業の利潤の増大だけでなく、社会全体に与える影響までをも考慮したものでなければならないという考え方が生まれてきました(社会志向)。ウォルト・ディズニー社は、「肥満の原因とされる企業との提携は社会的責任に反する」としてマクドナルド社とのキャラクター使用や映画の提携契約を打ち切っていますが、この考え方の一例と言えるでしょう。

ターゲットマーケティングと市場細分化

 マーケティング目標(売上高、利益額・利益率、市場占有率、企業・製品イメージ等)が設定された後には、その目標を達成するための市場の選定が行われます。消費者の価値観や嗜好が多様化している昨今では、消費者のニーズを単一なものと考えて、同じ製品を市場に大量に投入していく手法(マスマーケティング)ではなく、市場を細分化し、その細分化された市場の中で最も適切な市場を標的(ターゲット)とし、その標的市場に対して最も効果的な手段を投入していく方法(ターゲットマーケティング)が広く採用されています。

 細分化された市場が有用であるためには、①市場規模と購買力が容易に測定できる②マーケティング活動が効果的に到達できる③十分な規模を持ち十分な利益が得られる④市場を引き付ける効果的なプログラムが実行可能、という要件を満たす必要があります。また、市場を細分化する基準としては、①地域や気候、人口密度等の地理的な基準②年齢、性別、所得、職業、学歴、宗教、国籍等の人口統計的な基準、③消費者の価値観やライフスタイル等の、消費者の心理的側面に焦点を当てた基準④ベネフィット、使用率、ロイヤルティ等の行動変数基準、が用いられます。