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2004/01/15

本シリーズの過去3回では、遺産相続は、遺言がある時は故人の生前の意思を尊重しながらも、遺産の一部は一定の相続人のために留保する制度(遺留分制度)があること、また、遺言が必要となるいくつかのケースと、遺言の正しい書き方等について述べてきました。

今回は、法定相続における基本原則、遺産を相続人の間で分割する手続(相続開始後、遺産は相続人たちの共有となりますが、民法は単独所有に移ることを望んでいます)、さらに被相続人に債務があった時はどう考えるか、について述べます。

2003/12/15

法律は、遺言について厳格な方式を定めています。

通常、次の三つの方式を定めています。

①自筆証書による遺言
②公正証書による遺言
③秘密証書による遺言


自筆証書に必要不可欠な四条件

自筆証書による遺言が有効であるためには、次の4つの条件が必要です。

①始めから終わりまで、全て自分で書くこと。代筆もワープロで作成したものも、無効になってしまいます。

②平成○○年○○月○○日と、日にちをはっきり書くこと。「○○月吉日」などは無効になります。

遺言は最後に書いたものが優先します。

内容的に前の遺言と後のものとが抵触する時は、その部分については後の遺言で前の遺言を取り消したものと見なされます。

よって、日にちは絶対に必要となります。

③自分の名前を明記すること。本名をフルネームで書くことが望ましい。

④はんこを押す。三文判で構いません。

この自筆証書は、亡くなった時にすぐに開封することができません。

相続人全員が集まったところで、家庭裁判所の裁判官が開封する「検認」という手続が必要になります。

書く方は簡単でも、亡くなった後に面倒がかかります。

2003/11/15

戦前の我が国では、長男が全財産を一人で相続する建前でしたから、相続争いも少なく、したがって、遺言する者はほとんどありませんでした。

しかし、戦後は共同相続となりましたので、遺言がないと、全相続人が必ず遺産分割協議をしなければならず、協議がまとまらなければ、裁判所で決めるという建前をとっています。

相続人間の争いは、この遺産分割協議のときに表面化してきます。

それで、自分の死後、遺産をめぐり親族間に起こるかもしれない醜い争いを未然に防ぐために、遺言書を作り、予め各相続人の間の遺産の取り分や分配の方法を具体的にはっきりと決めておくのがよいのです。

2003/10/15

戦前の相続と戦後の相続

「相続は、死亡によって開始する」(民法882条)とあるように、戦後の民法では、相続ということは人が死ななければ起こりません。

中小企業の社長が息子に会社や財産を譲っても、それは財産を贈与しただけであって、相続させたわけではありません。

一方、戦前の民法では、人が死ななくても相続は起こっていました。

家督の相続ということで、長男が家の財産を全部引き受けて、一家の生活の面倒を見ていました。

遺産をめぐり「相続」が「争続」になることもあります。

戦前では財産は個人に属さず家に属していましたから、家長が死んでも家の財産は変わらず、家長の交代が起こっただけでした。

ですから、相続をめぐって家族の間でトラブルが起こることはあまりありませんでした。

しかし、終戦後憲法が変わりました。

新憲法が個人の私有財産を認める(第29条)とともに、法の下の平等原則(第14条)をうたい、権利や義務において、長男だから、次男だからという差はなくなりました。