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This is the archive for February 2018

2018/02/15

 米国は、建国以降の歴史は短く、世界各国に対する影響力の大きさや影響の与え方に対する根強い反発はあるものの、清教徒が希望をもって新天地で神の国を作るという建国精神を持っており、大統領の就任演説や一般教書演説を聞くと、その香りを感じる。

 32代大統領F・ルーズベルト(1933年就任、民主党)の就任前の1929年にアメリカは大恐慌に見舞われ世界中を巻き込んだ。1933年のアメリカの失業率は25%で1200万人の失業者が巷にあふれた。将来に不安を感じる国民を前にF・ルーズベルトは「the only thing we have to fear is fear itself」(我々が恐れなければならないものは恐れそれ自身である)と警告し、非理性的で不条理な恐怖心それ自体が前進に必要な努力を無にするのだと呼びかけた。

 35代大統領ジョン・F・ケネディ(1961年就任、民主党)は、冷戦で東西対立が厳しい時代に就任し、自由の価値と自由を守り発展させるために人々がなすべき行動をアメリカと世界の人々に呼び掛けた。「my fellow Americans: ask not what your country can do for you -- ask what you can do for your country」(わが同胞アメリカ国民よ、国が諸君のために何ができるかを問うのではなく、諸君が国のために何ができるかを問うてほしい)と求めるだけでなく、「私たちが諸君に求めることと同じだけの
高い水準の強さと犠牲を私たちに求めてほしい」と意欲を示した。

 40代大統領ロナルド・レーガン(1981年就任、共和党)は、アメリカが苦しんでいる経済危機は短い年月では解決できずとも、アメリカ国民には自由を守るためにすべきことをする能力があるとして、「government is not the solution to our problem, government is the problem」(政府が我々の問題を解決するのではなく、政府自体が問題である)として、民間活力を呼び起こすべく大型減税をした。

 45代大統領ドナルド・トランプ(2017年就任、共和党)の就任演説はアメリカ再建とアメリカ第一主義を唱える短いものだったが、就任一年後の一般教書演説は、「貿易関係は公正さと互恵的であることが大切」や「脅威に対し弱さは争いを呼び込み比類なき力が防衛の確実な手段になる」などの認識のもと、「in America, we know that the faith and family, not government and bureaucracy , are the center of American life」(我々米国人は米国の生活の中心が政府や官僚制度ではなく、信仰と家族だと知っている)と、アメリカの伝統に帰ることを訴えた。

 トランプ大統領に対しては、世界を振り回す「異端児」と見られる面もあるが、米社会の左傾化・世俗化を加速させたオバマ前大統領の路線を明確に否定・転換したトランプ氏に対し、キリスト教福音派を中心とする宗教保守派からは称賛が続いている。
『人間の正体と霊界との関わり』(那須聖、光言社、1996年)

 長年ニューヨークに在住し、明快な外交評論を行ってきた著者は、一方で超心理学の研究を続けてきた。

 著者は、近年の科学万能主義により自然科学的な方法でとらえられない神や霊界は存在しないと考えたり、その存在を説く人を野蛮人であるかのように考えたりする風潮が広まっていることに危機感を抱く。進化論は外面的、物質的、肉体的な面を検討の対象としており、その範囲では正しいものの、人間の人間たる主たる要素は内面的、精神的、霊的な面であるとし、神は旧約聖書の創世紀の記述のように宇宙を創造されたが、神の計画通りに生物を進化させて最後に神の息を吹き込み人間を創造されたのであり、進化論は神の創造と矛盾するどころか、むしろ神の創造の一環を説明するものであるとする。

 著者は「肉体と霊魂の関係」や「天界と地獄」の様相についても記述しており、本書の執筆に際しては数え知れないほどの霊感を受けたという。

『ダーウィンメガネをはずしてみたら』
         (安藤和子、いのちのことば社フォレストブックス、2007年)

 大阪大学や東京大学大学院で、そして米国に留学して生命科学を学び、その後研究所でも部長職で勤務するなど時代の最先端で研究してきた著者が、生物を殺して組織、細胞、分子レベルで追求する生物化学という研究手段では、生物を生きたもの、魂の入ったものとして見る視点が欠落しており、生命の本質についての答えを得ることができないと分かり、がくぜんとする。

 聖書は科学と矛盾すると考えていたが、聖書を読み込むうちに、そのような自分の考えや宗教は弱者が頼るものという世間の常識の間違いを知り、聖書は自然科学研究の百年も千年も先を歩み先導している事実を知る。そして、弱者を切り捨て強者だけ生き残る社会、どこから来てどこへ行くのかわからない生命観に立って、互いの存在と生命を尊ばない社会は、「いのちは自然に発生し、弱い者は滅んでいく」と、ひとつの仮説にすぎない進化論が唱える考えから派生していると確信する。まさに、学校教育でかけさせられたダーウィンメガネをはずしてみたら、真理と心豊かな世界への道が開けていくのである。

『それをお金で買いますかー市場主義の限界』
             (マイケル・サンデル、早川書房、2012年)

  ここ30年に起こった決定的な変化は市場と市場価値が、それらがなじまない生活領域へと拡大したことだった。ダラスの成績不振校は子供たちが本を読むたびにお金を払い、親が名門大学に寄付をして子供を入学させ、自国の戦争に傭兵を雇うようになった。このように行きていく上で大切なものに値段をつけるとそれが腐敗してしまう。子供はお金のために本をもっと読むようになるかもしれないが、読書は心からの満足を味わわせてくれるものではなく、面倒な仕事だと思えと教えていることになる。新入生となる権利を最高入札者に売れば、収益は増えるかもしれないが、大学の威厳と入学の名誉は損なわれる。自国の戦争に外国人の傭兵を雇えば、同胞の命は失わずに済むが、市民であることの意味が貶められる。

 市場はものを分配するだけではなく、取引されるものに対する特定の態度を表現しそれを促進する。これをどのように考えるかを、日本でも「ハーバード白熱教室」の名前でよくNHK教育テレビに登場した、米国ハーバード大学の法哲学の教授が問題提起する。