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2006/09/15

 コンビニのトイレに「きれいに使っていただき、ありがとうございます。」という貼り紙がしてあった。トイレを使う人はきれいに使うかどうか分からない。汚してそのまま出ていく人もいるかもしれない。しかし、「きれいに使っていただき」と未来(使用後)の姿を断定的に表現されてしまうと、きれいに使わないといけないという気持ちになってしまう。

 あるセミナーでは自分の墓碑銘に書いて欲しい内容(「何某はこの分野でこのような業績をあげた」等)や、自分の訃報記事を自分で文章化させていた。いずれも、未来(死後)の自分がどう評価されたいかを考えることによって、これからの自分の生き方を考えるきっかけとなっている。

 未来の自分の姿は、いわば人生の「設計図」に該当しよう。建築物であれば「設計図」の他に施工管理や工程管理があってこそ建物完成への道筋が明確になる。では、人生の工程管理はいかにして行えばよいか。

 コーチングにヒーローインタビューという手法がある。コーチからコーチングを受けるクライアントが仕事などの目標設定をし、目標が達成したと仮定して、コーチから「おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせ下さい。成功した原因は何だと思いますか」等ヒーロー(成功者)にしてもらってインタビューを受けるというものだ。面白いことにこれを受けると成功パターンが一つだけではないことが分かることがあるという。

人生の工程管理を支援するもう一つの方法は、中間の目標を設定することだ。30歳ならば60歳になった時の完成図だけでなく、そのためには50歳や40歳の時にはここまで実現しておこうという中間図を描くことである。

 実際の時間は現在から未来へ向かって流れているが、心で未来のことを描くとそれが原因となって、現在すべきことという結果が出てくる。現在が原因で未来が結果という普通の因果律とは異なる、このような原因、結果の関係のことを内田順三氏は「精神としての武士道」(コアラブックス)の中で「逆向き因果律」と呼んでいる

 そして、それは過去と現在との関係にもあてはまるという。つまり、過去の不幸な体験(事故、病気、離別など)も現在から見れば、自分の人生に必要なものであったと理解されるときに、過去に対する解釈が変わり、人生が統合されていくというのだ。

 過去は変えられないからと考えない人、未来を考えずとも今与えられたことをし続ければそれで良いと考える人、また計画は立てた方が良いとは思うが、変わるかもしれないからあまり意味がないと考えている人もいる。

 しかし、それは人間の想像力や、価値の発見により再起する力を過小評価している。過去の自分の人生を振り返る老人の統合の感懐を若者が知れば、人生に無駄なことはないと思え、勇気を持って未来を構想できるのではなかろうか。

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