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2014/03/15

 学習や普段の会議等で今や必需品となったスリーエム社のポスト・イット(付箋)誕生の経緯は興味深い。強力な接着剤の研究をしていた研究員のシルバーは、「良く付くが簡単にはがれる」という、奇妙で接着剤としては失敗作を作ってしまったが、それから五年後に同社の研究員のフライが、「讃美歌集のしおりとして使えるのではないか」と考え、実用化したところ、世界的な大ヒットとなったというのである。「すぐはがれる接着剤なんて利用価値がない」と思い込んでいては誕生しなかっただろう。

 今後の日本社会に関するマスコミ報道を見ていると、「女性の活躍できる場を増やそう、そのためには保育所の待機児童を減らすような施策をしなければならない」として、「待機児童数が多い=劣悪な社会環境」という図式が定着してしまっている。確かに、幼児を預かってもらえれば夫だけでなく妻も勤めに出られて、家計は安定することになるかもしれない。しかし、保育の現場では、預かる時間が長くなるにつれて親たちの中で子供に対する慈しみの思いが薄れていることが懸念されているという。

 保育ということが幼児ではなく親の都合や経済社会の視点からしか論議されていない中、元埼玉県教育委員会委員長の松井和氏の視点は、親が子を産み共に生きる中で幸福になるという、きわめて当たりであるが、最近忘れ去られている視点から子育て政策を提起しておられ、発想の転換を感じて興味深い。

 同氏によれば、幼児とは一人では生きていけないのに周囲の人を信じ頼り切り、それでいてとても幸福そうな人たちだ。大人はその様な存在とともにいると自分の中の善性が引き出されてくるし、相手の気持ちを考えて理解しようとするしかないので平和になっていく。「幼児から始まる幸福感」から子育ての施策を考えた方が、結果として国全体に良い影響を与えるというものだ(En-ichi 2012.2,2012.8)。

 また、日本の人口が減少し生産年齢人口も減少していく中、外国人受入れ政策については、あまり議論がなされていない。

 とりわけ外国人受け入れ反対の根拠として、「犯罪が増える」という理由があげられることが多いが、1985年から2008年にかけての外国人入国者数の伸び率が同期間の外国人犯罪の上昇率を大幅に上回っており、外国人が増えると治安が悪化するという説は正しくないようだ(毛受敏浩著『人口激減』新潮新書)。

 むしろ、異質な考えの人と接することによってものの見方や発想方法が多面的になって、日本人にとり革新的な成長の機会と考えた方が良いのではなかろうか。私が接しているパキスタンの方の中には、日本語が流暢な人が何人もいるが、学校で日本語を学んだのではなく、仕事をしていくうえで必要なので何度も質問していく中で覚えたという。なかなか英語が話せない日本人にとって、大きな発想の転換となるのではなかろうか。

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