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2011/09/15

企業の安全性

 ある会社の財務諸表を見て、その会社の実力を見抜く場合には、優先順位があります。①安全性②収益性③成長性の順番です。最優先すべきは、短期的に倒産する懸念がないかどうかを見抜くことです。そのためには「流動比率」(流動資産÷流動負債)という指標を使います。流動負債(1年以内に返済義務のある負債)の返済が不能となると即座に倒産の可能性が高まりますので、流動負債をまかなうだけの流動資産があれば(流動比率が100%以上)、まず当面は大丈夫と考えます。ただし、この一般論は、商品を売ってから資金を回収するまでの期間(サイト)と、在庫などを買ってから支払を行うまでの期間が近い卸売業や製造業では当てはまりますが、販売後の資金回収が遅いなどの現金化が遅い会社では、流動比率が120%でも資金繰りがたいへんな会社もあります。

 企業の安全性をより厳格に見ようとするときは「当座比率」(当座資産÷流動負債)を用います。当座資産とは、流動資産の中から棚卸資産のようにすぐには現金化しにくい資産を差し引いたものであり、現預金、有価証券、売掛金及び受取手形から貸倒引当金(倒産等で回収が不能になる可能性が高いものの金額)を引いたものです。当座比率は一般的には90%以上あれば短期的な安全性には問題ないと言われています。

 しかし、貸借対照表などの計算書は、決算から最低でも2ヶ月くらいたってから公表されますので、会社の倒産を左右する当面の資金繰りを考える上では古い情報となることも多くあります。その場合は、手元流動性((現預金+すぐに売れる資産+すぐに借りることのできる与信枠)÷月商)で判断します。手元流動性は月末などで、中堅企業で1.5カ月、中小企業で1.7カ月くらい持っていると安全です。

キャッシュフロー計算書

 企業は発展するのに必要なキャッシュフロー(現金や預金のこと)が得られなくなると、事業が発展できなくなります。さらに現事業を維持するだけのキャッシュフローさえ得られなくなると倒産ということにもなりかねません。

 キャッシュフロー計算書は、2000年3月期から始まった「連結決算制度」の変更時に導入された財務諸表のひとつです。それまでは、貸借対照表、損益計算書の2つが主な財務諸表でしたが、キャッシュフロー計算書の登場で「財務三表」の時代になりました。

 キャッシュフロー計算書は、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つのセクションに分かれています。
「営業キャッシュフロー」は、企業が通常の営業活動でどれだけのキャッシュフローを得たか、あるいは失ったかを表しています。キャッシュフロー計算書で見ると、「税金等調整前当期純利益」から「資金の支出を伴わない費用」や「営業循環上の資金の動き」を調整して計算します。「資金の支出を伴わない費用」とは減価償却費や資産の評価損のことであり、いずれも費用として計上されますが実際にはお金は出ていかないものです。「営業循環上の資金の動き」とは、売掛金や買掛金、在庫などです。いずれも損益計算書ではとらえることのできない資金の動きです。

 「投資キャッシュフロー」は、企業が投資にどれだけのお金を使ったか、その投資からどれだけのお金を回収したかを表しています。普通は、減価償却費分ぐらいは再投資を行わないと企業は現事業の維持すらおぼつきません。「財務キャッシュフロー」は、財務活動でのキャッシュフローの動きを表します。具体的には、①借入、社債、増資などでの資金調達や資金償還②配当や自社株式買入などの株主還元を表しています。

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