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2011/08/15

資金調達

 企業の資金調達の源泉は、企業外部からの資金調達(外部金融)と企業内部からの資金調達(内部金融)に分けることができます。外部金融は、直接金融(株式や社債等の有価証券を発行することにより資本市場から直接資金を調達すること)、間接金融(金融機関等から資金を調達すること)、企業間信用(支払手形や買掛金を発生させることによる資金調達)に分類できます。内部金融は自己金融ともいい、事業活動によって自ら生み出した利益を内部留保することによる調達と、減価償却があります。外部金融のうちの株式発行と内部金融を合わせて自己資本と言い、株式発行以外の直接金融と、間接金融、及び企業間信用を合わせて他人資本と言います。自己資本とは純資産であり、他人資本とは負債のことです。

負債と純資産の調達コスト

 資金調達には当然のことながら、調達コストがかかります。負債の調達コストは「金利」です。負債には借入金や社債等の有利子負債と、買掛金など金利のかからない無利子負債がありますが、有利子負債の金利が調達コストです。無利子負債を含めた負債全体での調達コストは一~二%程度の企業が多いと思われます。

 純資産の調達コストは「配当」と考えてもよいのですが、現在のファイナンス理論では「株式の期待収益率」と考えられています。この値は、CAPMという資本資産価格評価モデルと市場リスクの尺度であるβ(ベータ)係数を用いて算出されます。負債の調達コストよりも、この純資産の調達コストの方がずっと高い値です。

 負債と純資産という複数の資金調達源泉がある場合、調達源泉別のコストの総額が資金調達の総額に占める割合(加重平均資本コスト(WACC))が、その会社の資金調達コスト(資本コスト)となります。

調達コストと利益率の関係

 企業はコストをかけて資金を調達して事業を行うので、その資本コスト以上の利益率を出さなければ意味がありません。WACCは資産をまかなうための資金の調達コストであり、資産を使って得られるべき利益もそれに応じて高くなければなりません。資産を使った利益率は、ROA(総資本営業利益率=営業利益÷総資本)です。このROAがWACCより高くなければなりません。

 WACCと比較する際の利益率としてROE(自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)を用いるという考え方もありますが、経営者の経営姿勢という観点からは、ROAの方が良いように思われます。資産をまかなうために負債と純資産で資金調達しているわけですから、経営者はその負債と純資産の双方に対して責任があり、それに見合ったリターンを出す必要があります。それがROAです。ROEと比較するというのは、自己資本つまり純資産にだけ見合ったリターンを出していればよいということであり、負債を提供する社債権者や銀行に失礼な考え方だとも言えます。 

 なお、ROAでは他社比較をする場合、「利益」は「営業利益」でも「経常利益」でも「純利益」でもかまいませんが、ROEに関しては必ず「純利益」です。ROAを計上するときの「利益」を「純利益」とすれば、ROEはROAに(資産÷純資産)、つまり自己資本比率の逆数を乗じた値になります。自己資本比率が高ければ企業の中長期的な安定性に貢献するのですが、ROEが低くなり株価が低迷しがちで買収のターゲットになりやすくなります。ROEを高めようとすれば、負債を増やすなどして自己資本比率を小さくすればよいのですが、負債のこの「てこ」のような役割に注目して、自己資本比率の逆数である(資産÷純資産)を「財務レバレッジ」と言います。

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