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2010/07/15

 日本の第55代内閣総理大臣石橋湛山は、戦前の軍国主義時代の中にあっても、一貫して日本の植民地政策を批判し続けた。湛山と同じ時代を生きた清沢洌(きよざわきよし)の主張も、湛山の主張と共通点を持つとともに、対米関係においては協調路線、対中関係では満州経営への拘泥を戒めるものであった。柳宗悦も朝鮮半島で勃発した3・1独立運動に対する朝鮮総督府の弾圧に対し、「反抗する彼らよりも愚かなのは迫害する我々である」とした。

 言論弾圧を受けたり、命の危険を感じながらも、彼らは自分の良心に忠実に考え行動し続けた。私もそのように生きたいと思う。彼らが時代に支配する考え方にほんろうされることなく自分の信念を貫き通すことができたのは、一流大学で学んだり若いころから海外の大学へ留学するなどして、新しい考え方と出会い思索を深める機会があったことが大きく関係していると思う。そのような機会に恵まれない人々は、時代の大きな流れに流されざるを得ない場合が多い。

 飛行機や魚雷で敵艦に体当たりせよと命令されたら、私は恐怖に耐えられない。あるいは、結果的に生き延びて帰ってきた場合であっても、ロシアに抑留され共産主義の思想教育を受けていたりすると事情は複雑だ。誰も非難することはできないとは思うが、自分の精神的弱さから正しい思想ではないと思っても保身のため受け入れたふりをし、受け入れない同僚を傷つけたりするなどして、日本に帰国後そのことを追及されたり、赤とレッテルを貼られても忸怩たる思いで生きていかなければならない。

 このような戦争の悲惨さを知ると、2度と時代にほんろうされたくないと思う。しかし、私はこの時代においても国家とは別のマスコミという権力によって、すでに多くの人がほんろうされていると思っている。

 分かりやすいのはマスコミの性報道である。日本は戦後純潔教育委員会を作って青少年に克己心を持たせるように尽力してきたが、もはや見る影もない。マスコミが性情報を氾濫させることで性から神秘性が取り除かれ即物的・唯物的なものとなってしまった。10代女性の妊娠率の高さから米国では20年近く前から自己抑制教育が導入され、米国人は性に対して保守的になってきたというが、日本にその気配はない。エイズ予防教育は、まず禁欲と貞節を教え、それがうまくできない場合にのみ避妊具の使用を勧めるという方法が効果的であるにもかかわらず、日本では避妊具の使用法を教えることを第1としていることが多いのも愚かしいことだ。日本国民は経済的利益を優先し道徳的虚無に陥ったマスコミによって精神を骨抜きにされ、劣等民族になり下がることを憂えるものである。

 歴史に学び、世界に目を向けながらも、何よりも自己の良心の発露に耳を向ける謙虚さと勇気を持って生きていかなければ、時代にほんろうされてしまいそうだ。

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