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2007/12/15

水準が低い日本の起業活動

 国の経済の骨格を形成する多くの企業の出発点は、創業者による起業活動から始まっています。日本では、起業活動の水準を見る時、一般には総務省による「事業所・企業統計調査」が使われています。調査員が実際に事業所や企業を訪ねて調査票を配布・回収する方法をとりますが、前回調査時には存在せず今回調査時に存在した事業所や企業が新しく誕生した企業として認識されます。

 この調査による1年間に誕生した企業数を分子に、調査時点の期首年における総企業数を分母として「誕生率」を計算すると、新たに誕生した企業数と同様に誕生率も近年低下傾向にあることが分かります。

 誕生率を1999年~2001年の間で、米国、英国と比較してみると、日本は3.1%であるのに対して米国、英国では計算のし方が日本とは異なっている点はあるものの、3年間の平均値は10.1%、10.4%と日本の水準と比べると、相当高くなっています。

起業構造

 起業活動の基本的構成要素は次の3つです。

①財・サービスと市場との整合性の新たな可能性(事業機会)の認識
 どのような事業機会を認識するかは、起業の成功と失敗を分ける大きな要素であり、また起業活動の複雑さを決定する要因でもあります。市場の成長性(ある・なし)と財・サービスの差別力(ある・なし)で事業機会を類型化すると、最も成功の確率が低いものは成熟市場(成長性なし)に差別力のない財・サービスを投入することでしょう。他の3つは成功の確率という面では大きな差はありません。

②財・サービスを顧客に供給するシステムの構築
  「製品・サービスの開発」→「製品やサービスを組み立てるのに必要な材料や部品の調達や外注先の確保」→「製造やオペレーション」→「流通チャネルや物流チャネルの確保」→「マーケティング」の順で供給システムを作ります。

③諸活動を支える経営資源の調達
 資金、人材、設備、信用等の経営資源が確保できなければ、事業は前に進みません。例えば、資金集めに際しての最初のハードルは資金の出し手に事業内容や事業の可能性を理解してもらうことです。

既存企業との違い

 既存企業が新たな事業を展開する場合、すでに行っている事業との関連性を重視します。そのための活動を支えるロジックは「規模の経済」(生産や購買規模が拡大する際にそれに伴う平均費用が減少すること)、「学習効果」(ある取引や活動の過去からの蓄積によってそれに伴う費用が減少すること)、「範囲の経済」(ある経営資源を一つの活動のみに使うよりも複数の活動に使った方が効率的になるという考え方)などです。

 起業活動ではこれらのロジックのベースになるものは存在しないので、同じ事業機会を既存企業と争っても良い結果が得られません。起業家が認識した事業機会は既存企業が進出していない分野です。そこは未知の世界です。

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