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2007/12/15

 世の中には人の心を動かすことに大きな価値や喜びを感じる人が大勢いる。漫才師や落語家には、人を笑わせることに無上の喜びを感じる人が適していると思う。面白い話やほのぼのとした話をして、驚かせたり共感させたりして笑いをとり、笑っている観客の姿に喜びを感じるのである。

 教育の分野においても、「人の心を動かす」つまり「感動させる」ことが大きな効果を生み出す。
予備校の数学講師、桜井進氏は、古今東西の数学者が失敗を繰り返しながら概念や定理の発見に至った軌跡を、映像と音楽を組み合わせた数学ショーとして伝えている。生徒は数式の背後にある人間ドラマに感動し、医学部志望の少人数クラス全員が数学科志望になった年もあるという(読売新聞、平成17年11月16日)。

 感動することで、そのことをもっと知りたくなるうえ、そのようにして得た知識はしっかりと身に付く。そのことはだれしも体験によって知っているのではなかろうか。「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない」という言葉は、自然・環境教育の分野ではよく知られた言葉であるという。

 学校における道徳の授業においても、感動を通して「誠実」とか「寛容」等の価値の自覚を深めることが大切であるとされている(金井肇著『道徳授業の基本構造理論』明治図書出版)。その点から言えば、安倍内閣の教育再生会議が進めていた小中学校の道徳教育の正式教科化が実現されなったのは残念だ。

 前武蔵野大学教授の杉原誠四郎氏も著書『日本の道徳教育は韓国に学べ』(文化書房博文社)の中で、「たしかに『教育』というものを哲学レベルで考えたときは、道徳教育は不必要であるという見解も成り立つ場面がないではないが、現在の目前の子どもを見て、その健やかな成長を願うならば、このような見解はいささかも成り立たない」と、さらに「道徳は身近なテーマに関する議論ばかりではなく、子どもたちが偉人の逸話を通して、それを将来の生き方の目標とするような感動を得るということがより重要なのである」と主張しておられるが、同感である。

 霊の世界に通じマスコミでも人気の江原啓之氏の主張も、「人生の目的は経験と感動で人格形成をすることである。その内容が死後の世界へと連続していく」と明快で、人格形成における感動の重要性を説いている。

 県内在住のO氏は、学生時代に胸に響く宗教の教えを聴講し深く感動し、人のために生きる人生を送る決意をして、ヘビースモーカーで毎日酒を飲んでいたのに、両方とも欲しくなくなり自然と手にしなくなって30年近くたつという。

 感動によって人生を切り開いていけるような学校教育現場における仕組みの構築が願われるとともに、お互い身近な人同士が感動を与えあって喜びの中で生活していきたいものである。

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