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This is the archive for November 2013

2013/11/15

 自分はどこから来たのか、自分の先祖はどんな人たちか、自分の出発は何なのかが分からないと、生きていても安心できないことが多い。

 人工授精による精子提供で生まれた人には、生物学上の父親の情報開示は、「ドナーは匿名」の原則に基づき認められてこなかったが、1980年代より多くの国で認められるようになってきた。遺伝病等の不安を抱えて生きていた子どもにとっては朗報だろう。

 ケン・ジョセフ父子(シニア&ジュニア)著『【隠された】十字架の国・日本』は、日本人のルーツを示唆する刺激的な本だ。日本人と中近東のアッシリア人が、東方基督教である景教を媒介として古代からシルクロードでつながっていたと主張している。日本人は学校で、基督教が日本に伝わったのは16世紀のフランシスコ・ザビエルによると教わっているが、1~2世紀には原始基督教は日本に入っていたという。800年代には京都や奈良は、中国の長安と同様に大国際都市となり、街を歩くと黄色い人、白い人、褐色の人、黒い人に出会い、いくつもの基督教会、イスラム教会、仏教の寺が同居していたという。さらに、茶道など日本古来の文化と思われてきたものは、昔のキリシタンの聖さん式を摸したものであり、聖徳太子、光明皇后や空海などは景教に深く心酔していたとす
る。

 父の研究を引き継いだケン・ジョセフ・ジュニアは、日本生まれで、小学校に上がるまで自分は日本人と思っていたが、日本人離れした容貌を持つことを自覚し、自分は
日本国にとってはただの「お客さん」に過ぎないと思っていた。ところが、自分の先祖であるアッシリアの人々が大昔の日本にやってきて日本の町々を建て上げたことを知り「ここは自分の国でもあるんだ。ここにいていいんだ」と思えるようになったという。

 ルーツを知ることは、国際関係の改善に寄与する可能性もある。今日の日韓関係は、韓国が政治的な思惑から歴史問題を蒸し返し取り上げ、複雑な関係になっている。ところが、七世紀の朝鮮半島で、新羅による武力侵攻を受けた百済の国の人々が大挙して日本に渡来し、日本書紀や古事記の成立に大きな影響を与えただけでなく、天皇家との血統的なつながりまで指摘されるようになってきた。日本の成立自体に韓国(朝鮮半島)が大きな影響を及ぼしており、新羅と百済の関係が韓国と日本の関係に投影されているともいえよう。

 当時から今日までの間に日韓の間にはさまざまなことが起きているので、当時の関係だけをもってして、日韓関係を論じることはもちろんできないものの、日韓融和の端緒となる希望を感じる。

 時間軸と空間軸の中に自分を位置付けると、点にもならないような浮草のような存在であっても、自己のよってきたるルーツを知れば、しっかりと大地に足を付けて生きていけるような気がする。