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This is the archive for May 2009

2009/05/15

 円滑な事業承継を行い、承継後の経営を安定させるためには、後継者や協力的な株主に相当数の自社株式や事業用資産を集中させることが重要です。その方法としては、(1)生前贈与・遺言(2)会社や後継者による買い取り(3)会社法の活用、等があります。

(1)生前贈与・遺言
 生前に何の対策もしないまま経営者が死亡すると、相続財産の大半が自社株式や事業用資産である場合、後継者がこれらを集中的に取得することについて、他の相続人の同意を得ることが難しくなります。したがって、経営者の生前に贈与したり、遺言を作成するなどして、予め対策を講じるのが有効です。

(2)会社や後継者による買い取り等
 すでに分散してしまっている自社株式を後継者に集中するためには、どのようにすればよいでしょうか。
①後継者が他の株主から株式を買い取る
②会社が後継者以外の株主から自社株式を買い取って、後継者の持ち株比率を高める
③会社が新株を発行して後継者だけに割り当てて、後継者の持ち株比率を高める
等の方法があります。

(3)会社法の活用
 自社株式(議決権)の集中や分散防止のためには、会社法のどの制度を活用すればよいでしょうか。

①株式の譲渡制限
 定款で、株式を譲渡する場合に会社の承認を必要とすることにより、自社株式の分散を防ぐことができます。新たにこの制度を導入する定款変更のためには、株主総会の特殊決議(総株主の人数の半数以上で、かつ総株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要になります。

②相続人に対する売渡請求
 株主に対する譲渡制限を行っても、相続や合併による取得には適用されませんので、相続などによる分散を防ぐため、定款を変更して、株式を相続した株主に対して会社がその売渡しを請求することができるようにする、という方法があります。この定款変更には株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上を有する株主の賛成)が必要で、売渡請求をする場合にも、その都度、特別決議が必要です。

③種類株式
 株式会社は、普通株式の他に、種類株式(剰余金の配当、議決権等の権利内容の異なる株式)を発行することができますが、自社株式(議決権)の集中や分散防止に活用できるのは、議決権制限株式、拒否権付株式(黄金株)などです。

 議決権制限株式(株主総会での議決権の全部又は一部が制限されている株式)を活用して、後継者には議決権のある株式を、それ以外の相続人には議決権のない株式を、それぞれ取得させて、後継者に議決権を集中させることが考えられます。

 経営者が、自社株式の大部分を後継者に譲るけれども不安が残る、という場合には、経営者が拒否権付株式(一定の事項について、株主総会決議のために、必ず、拒否権付株式の株主総会決議が必要という株式)を保有し、後継者の経営に助言を与えられる余地を残しておく、といった方法があります。
(中小企業庁財務課発行「中小企業事業承継ハンドブック」参照)