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This is the archive for June 2003

2003/06/15

 米国の諺に「Comparison makes for unhappiness」(比較すると不幸になる)というのがある。

 消費者が商品を購入したり、企業が購買活動をするとき、いくつかの候補商品を比較して、廉価でより多くの満足を与えてくれるものを選ぶことは賢明な行動であり、先述の諺には当てはまらない。

 この諺が当てはまる身近な例は、教育だろう。わが子が学校から50点の試験の答案を持ち帰ったとき、「平均点は何点だった?○○君は何点だった?」と言っていないか(自戒を込めて)。たとえ50点であっても、いや10点であっても、全く勉強しなかったら零点だったのだから、勉強したことは事実なのだ。それなら、まずそのことに対して、「ご苦労さん。お疲れさん」と一言あってもおかしくはない。

 極端な話、「おお10点か、よく頑張ったな」と言ってやれば、子どもは恐縮して「よし、今度はもっと頑張ろう」と思わないだろうか。他者と比較すると、「僕は○○君ではない。同じ点数を望むなら、○○君の家のように、自分だけの勉強部屋を作ってくれ」と反撃されるかもしれない。

 私は、比べること自体が悪いとは思わない。一年前と現在、三年前と現在、生まれたときと現在を比べてみると、子どもは確実に成長していることが分かる。また、そのように育てた自分もたいしたものだと自信がわいてくる。子どもがこれまでと同じ調子で成長していけば、将来はもっと立派になるだろうと予測でき、期待がもてる。他者と比べると良い効果はもたらさなくとも、時間的先後関係で比べると、自分も周囲の人も幸福になりやすい。

 最近よく「ナンバーワンよりオンリーワン」と言われるのは、こういうことも含まれるのではないかと思っている。

 前言を覆すようだが、私は実は、「オンリーワンだけでも良くない」と思っている。

 昔、ケネディ元米国大統領が言った「国に何をしてもらえるかではなく、国に何をしてあげられるかを問いなさい」という趣旨のことばがある。私はこの意見に賛成だ。国に何か貢献しようとすれば、リーダーになれるほど優秀であった方がよい。結果的に他者より秀でていないとリーダーにはなれない。

 オンリーワンの観点で自分がどの分野で天稟や才能があるかについて納得できたら、今度はその分野でナンバーワンを目指すことが大切だと思う。「ナンバーワンよりオンリーワン」ではなく、「オンリーワンの次はナンバーワン」が良いと思う。

 ではどの時点でナンバーワンを目指すのかとか、特定のスポーツや芸術の分野では早いうちから訓練が必要なのではないかという疑問も出てくるだろう。日頃一緒に生活する親であれば、判断や子どもへの助言がしやすい。親として子どもを育てる醍醐味はここにあると思う。