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This is the archive for March 2006

2006/03/15

 「同じ戦うなら目標を立ててやるんだ」と偉人は言う。

 一朝一夕には実現できない目標でも、設定するとアンテナが張られ情報が集まり出す。普段と同じ道を歩いていても、目標に関連したことは、見落としていたことが見えてくる。磁石の上に紙を置き、その上に鉄粉をまくと、鉄粉は秩序正しく磁場の磁力線のパターンを描き出すように、いずれはやりたいと思っていたいくつものことが、目標を中心として優先順位がついて行動計画が立てられ、今日すべきことが明確になる。夢に方向を与える目標設定の力は強烈だ。

 私は、大人、特に子どもの親が、自分の人生や職業について子ども達に多くを語ることが、目標設定を促すうえで効果が大きいと思う。

 東京都町田市の中学校では学校を挙げて、保護者や地域の人材を「社会人先生」として学校に招き、教科の授業や道徳、人生講話等をしてもらう試みをしたという(4年間で100人以上)。すると、落ち着きのない子も問題傾向の子も、姿勢をピッとし、目を輝かせて傾聴したという。講師がわが子のいる教室で授業をしたとき、親子の絆が格段に深まった例がいくつもあるという(読売新聞、平成16年1月13日)。
 
 中学、高校では、14歳の挑戦プログラム(中学2年生が事業所や福祉施設など実際の大人社会の中に身を置き一週間働くこと)や、教師・父兄・生徒の三者による懇談会等が企画されているが、目標設定を促すという意味では、「社会人先生」による講話は、これらに優るとも劣らない方法ではなかろうか。

 なぜなら、「社会人先生」は子ども達が将来なる家庭人や職業人の一つの実例であるので、複数のそのような具体例に接していく中で、身につけたい人格や選びたい職業が次第に明確になっていくと期待できるからだ。ゴールイメージ(達成した状態のイメージ)が明確になれば、目標設定しやすくなる。

 目標設定を促すうえで、感動の力も強力だ。

 愛知県豊川市の私立豊川高校の数学教師、宮本延春(まさはる)氏は、中学時代オール1の通知票をもらい、「やっぱりおれはバカなんだ」と自分を見放した。就職して働いていた23歳の時に、ある人から「光は波か、粒か」をテーマにアインシュタインの理論を解説したテレビ番組の録画ビデオを渡され、見終わったときには味わったことのない気持ちでいっぱいになったという。感動した宮本氏は、「大学に入って物理学を研究する」という目標を設定した。九九のマスターや小3用のドリルから始め、定時制の高校で学び、名古屋大学理学部に合格したという。学部と大学院で宇宙物理学を専攻し研究に没頭したが、自分の経験が一番役に立つのは教師だと思い立ち、母校の教壇に立つようになったという(読売新聞、平成18年3月5日)。

 子ども達に感動を与え、ゴールイメージを持たせることができれば、自分から目標を設定して歩き始める。「勉強しろ」と言う必要は全くない。