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This is the archive for May 2012

2012/05/15

 企業の評価をする時、財務情報等の限られた情報だけをとらえてなされることが多いが、社内システムや理念を重視する経営者は、もっと見えないものを見てほしいと思っている。

 企業の「製品やサービス」が優れていればそれを生みだすのに用いられる「技術やノウハウ」が優れていると言えよう。ただ、どんなに技術やノウハウが優れていても、それを上手に活用したり強化する取り組み等の「マネジメント」が優れたものでなければ、優れた製品やサービスを継続して生み出すことはできない。そして、そのマネジメントの背後に経営者の優れた「経営理念・方針」があることを知ると、人はその企業の事業活動を全体として理解できる。

 ちょうど、一本の木の美しく趣のある「花や葉」は、それを支える「枝」や「幹」、そして木を安定させ継続して地面から栄養分を提供する「根」がしっかりしたものであってこそ毎年観賞できるのと似ている。

 就職氷河期と言われる昨今、何十社の面接をしながらも内定が得られず、それでも挑戦をしていこうと考える学生の様子がマスコミで報じられている。その姿勢は立派と思う一面で、上述のような観点での自己分析も必要ではないかと思う。

 つまり、自分が目標とする会社に就職したらどのような「会社への貢献」ができるのか。その貢献は自分のどのような「技術や知識」によって可能となるのか。その技術や知識を継続して会社に提供するためにどのような「自己管理」をするのか。その自己管理を継続させるための自分の「価値観や信条」は何なのか。このようなことを自分でよく考えることが大切だ。自分の「価値観や信条」を述べ、「自己管理」、「技術や知識」を説明したうえで、「会社への貢献」内容を説明すれば、面接官は好印象を得るだけでなく、人格的な触れ合いをした感触まで得て、共に働きたいという思いを持ってくれるかもしれない。

 人生を生きる個人の生き方も、同様のことが言えるように思う。会社の「製品やサービス」や求職者の「会社への貢献」に相当する最終成果物は、人生においては、死後他者から受ける評価であり、墓碑銘や訃報記事に書いてもらえ、人々の胸に残る「社会への貢献」の内容だろう。それを満足できるものとするためには、どのような「知識・技術・教養」を身につけなければならないか、それを人生の中で不断に身につけるためにどのような「習得・活用方法」を用いるのか、そしてそれを可能にするのは自分のどのような「価値観や信条」なのかを、常に自分の頭の中で繰り返し考えている必要がある。

 若い時からこのような思考パターンができていれば、世の中になにがしかを残せるかもしれない。そのためには、財産や学歴に目を奪われるのではなく、目に見えなくとも、まずは揺るぎのない「価値観や信条」を若身につけていることが肝要だ。(経済産業調査会発行、中森孝文著「『無形の強み』の活かし方」を参考にしました)