相手に対して負債感を持って接した方が関係が良くなるのは、個人間だけでなく国家間についても言えそうだ。
1985年3月のイラン・イラク戦争の最中に、イラクはイラン上空を航行する航空機は攻撃対象になると発表し、イラン滞在の300人の日本人は早
期のイラン脱出を願った。しかし、日本政府は、安全の確約が得られないとして、日本からは日本人救出のための飛行機は飛ばなかった。ところが、トルコ航空では、すぐさまミーティングが開かれ特別機への志願者を募ったところ、多数のスタッフが命がけの仕事に名乗りを挙げ、2機のトルコ航空機がテヘランに降り立ち、すべての日本人を救出した。イランにいた6千人のトルコ人は陸路を数日かけて脱出したという。しかも、救援機が日本人を優先したことに対して、トルコでは何の非難も出なかったという。
なぜトルコ国民はこんなに親日的なのだろうか。その謎は、それから100年ほど前の1890年の出来事にあるようだ。この年、600人のトルコ人使節団が明治天皇と会見し日本人との交流を深めるために、軍艦エルトゥールル号で来日した。3か月の滞在の後、帰国の途につくことになったが、台風に遭遇しエルトゥールル号は、和歌山県沖の岩場で座礁した。400人の大島村の村民が総出で救援にあたり69人の命を救った。この美談はトルコの小学校の教科書にも載ることになったというから、おそらくトルコでは、日本に対して負債感を持ち恩返しをしたいという思いが、親から子、子から孫へと伝わっていたのだろう。
日本は、昔は中国や朝鮮から文化や宗教を、明治維新では欧米諸国から科学技術の恩恵を、そして現在も、食糧、原材料や燃料を受け入れることで、日本人の生活が成り立っている。感謝の気持ちを忘れず、国際貢献できないときは申し訳ないという気持ちを持って、各国と交流を進めて行くことが肝要と思う。
Posted by oota at 07:04 AM. Filed under: 随想・評論(平成24年度)