ユネスコの諮問機関イコモスが、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を「禁教期にもかかわらずひそかに信仰を継続した潜伏キリシタンの独特の文化的伝統の証拠」と評価し、集落や「大浦天主堂」等の構成資産すべての価値を認めた。もともと政府は、「教会建築中心の長崎の教会群とキリスト教関連資産」として推薦していたが、イコモスから禁教期に焦点を当てるべきだと指摘されて推薦を取り下げ、内容を練り直して再推薦したという。学生が卒業論文を教授に見せたら再考を促されたようのもので、政府関係者がどこまで潜伏キリシタンが命がけで信仰を維持したことの価値を理解しているか疑問だ。

 現代もこの日本において、一部の少数派宗教信者に対する迫害や人権侵害の黙殺が長期間続いていることを知ると、特にそう感じる。自分の信仰を告げると友人関係を断たれたり、国家公務員の幹部候補生となった信者が信仰が分かると昇進の道を断たれるので、発覚しないように隠れて信仰している。

 統一教会(現世界平和家庭連合)信者に対する強制棄教は1966年から始まり現在までの被害件数は約4300件に達しているという。一般の教会の牧師と信者の親族が結託して強制的に拉致・監禁し、外部との連絡を一切取れない状況下に置き、統一教会を退会するまで説得工作が延々と続く。信仰を守るために自殺や自殺未遂をする信者も出てくる。

 2008年2月に解放されるまで12年5カ月間にわたり監禁されていた後藤徹氏の話
を解放後に直接聞いたことがある。監禁中は教会関連の書籍は見せられないので、教祖のことばを反芻しながら信仰を守り抜いたという。70キロだった体重が50キロに激減し、全身筋力低下、廃用性筋萎縮、栄養失調に陥りながらも、監禁の最後のころは仕打ちを受けつつも神の愛で満たされ、さわやかな顔で過ごせたという。

 アメリカでも1970~80年代に強制棄教はあったが、裁判所は、信仰と身体の自由権を侵害する違法行為であると認定し、政府の強力な取締まりの結果、完全に撲滅された。

 しかし、日本においては大手マスメディアは、後藤徹氏のケースをはじめとして一切の拉致監禁事件を黙殺し報道してこなかった(唯一の例外は「朝日新聞」1984年5月14日号の高木正久執筆記事、室生忠著『日本宗教の闇』より)。

 統一教会が、信者による違法性のある物品販売を行っているからといって、そのことと信者を拉致監禁して強制的に棄教させようとすることとは全く別次元の問題であるのに、大手マスメディアはそう考えられないようだ。あるいは報道すると突出感があるので、考えられないふりをしている可能性もある。

 米国国務省は「信仰の自由に関する国際報告書」の中で日本における強制棄教を問題視している。横田めぐみさんを始めとした北朝鮮による拉致被害者救出への国際世論への呼びかけをしても、このような国内における拉致監禁問題を放置していたのでは、「日本は本当はどうでもよいと思っているのではないか」と思われて、救出への日本としての本気度が疑われるのではないか。